
もし、わが子が家を建てるなら。
第16回|「無垢材だから良い」と決めつけるな。
家づくりでは、「無垢材は本物で良いもの」「工場でつくられた建材は安っぽいもの」と思われがちです。
無垢材の値段が高いと、それだけで上質な材料に見えることもあります。しかし、価格が高いことと、その家族、その場所に最適であることは同じではありません。
無垢材には無垢材の良さがあり、複合材やシート材などの工業製品にも、それぞれの良さがあります。大切なのは、素材の肩書ではなく、暮らしに合っているかです。
住宅営業柴田
店長、家づくりでは「無垢材を使っています」が、すごく良いアピールになりますよね。
住宅事業部長奥柿
なるね。「自然素材」「本物の木」と聞くと、それだけで良いものに感じる人は多いと思う。
実際、無垢材には気持ちの良い質感や木目、経年変化の楽しさがある。俺も好きな材料だよ。
住宅営業柴田
では、子どもが家を建てるなら、無垢材を勧めますか?
住宅事業部長奥柿
「無垢だから」という理由だけでは勧めないね。
無垢材は良いものではある。でも、どこに使っても一番良い材料ではない。そこは必ず伝えるよ。
「自然=良い、工場製品=悪い」ではない
住宅営業柴田
工場でつくられた建材というと、偽物みたいに感じる方もいます。
住宅事業部長奥柿
でも、それは少し乱暴な見方なんだ。
合板、集成材、LVL、複合フローリング、シート建材。どれも弱点を抑えたり、品質を安定させたり、特定の性能を持たせたりするために開発されている。
住宅営業柴田
工場製品だから質が低い、とは限らないんですね。
住宅事業部長奥柿
むしろ、寸法、強度、表面性能などを管理しやすいことが工場製品の良さになる場合もある。
もちろん工場製品なら何でも安心という話でもない。製品ごとの性能表示や使い方を見ることが大切だよ。
無垢材は、季節や湿度で動く
住宅営業柴田
無垢材を選ぶ時、何を理解しておけばいいですか?
住宅事業部長奥柿
まず、木は完成後も湿気を吸ったり放出したりする材料だということ。
湿度や乾燥の影響で膨張や収縮が起こり、反り、割れ、すき間が出ることがある。これは自然素材としての性質なんだ。
住宅営業柴田
それが出たら、施工不良というわけではない?
住宅事業部長奥柿
程度や原因によるから、一概には言えないね。乾燥状態、樹種、材料の品質、施工方法、室内環境でも変わる。
「無垢だから仕方ない」で何でも済ませてはいけないし、少しの動きを全部不良扱いするのも違う。契約前に、どこまでが素材の特性なのか確認しておくべきだよ。
- 色や木目には一枚ごとの違いがある
- 湿度や乾燥によって伸び縮みする
- 反り、割れ、すき間が生じる可能性がある
- 柔らかい樹種は傷やへこみが付きやすい
- 塗装によって手触りや手入れ方法が変わる
- 日焼けや経年変化で色が変わる
- 同じ「無垢材」でも、樹種、等級、乾燥、加工品質が違う
床材は、家族の暮らし方で正解が変わる
住宅営業柴田
一番迷うのは、やっぱり床材でしょうか。
住宅事業部長奥柿
そうだね。素足の感触や木の表情を楽しみたいなら、無垢フローリングは魅力的だよ。
傷や色の変化まで家族の歴史として楽しめる人なら、満足度も高いと思う。
住宅営業柴田
反対に、複合フローリングが合うのはどんな家庭ですか?
住宅事業部長奥柿
傷や汚れへの対応、掃除のしやすさ、色柄の揃い方、床暖房への対応などを優先したい家庭だね。
ただし、複合フローリングも製品によって性能は違う。「複合なら全部丈夫」「全部床暖房対応」とは限らないから、個別に確認が必要だよ。
| 重視したいこと | 検討しやすい選択肢 | 確認すること |
|---|---|---|
| 木そのものの質感や経年変化 | 無垢フローリング | 樹種、硬さ、塗装、乾燥状態、手入れ |
| 寸法の安定や均一な仕上がり | 複合フローリング | 基材、表面材、保証、施工条件 |
| 床暖房を使いたい | 床暖房対応と明記された製品 | 熱源との適合、施工方法、保証条件 |
| 水や汚れへの対応を重視 | 用途対応の加工製品 | 耐水と防水の違い、継ぎ目、手入れ方法 |
| 傷を補修しながら長く使いたい | 無垢材・厚い挽き板など | 表面の厚さ、塗装、補修可能な範囲 |
表は一般的な考え方です。同じ分類でも性能は製品ごとに異なります。「無垢」「複合」という名称だけで決めず、メーカーの仕様書、施工要領、保証条件を確認してください。
水まわりや建具では、安定性が価値になる
住宅営業柴田
床以外では、どんなところに工業製品の良さがありますか?
住宅事業部長奥柿
例えば、洗面所やキッチンのように水や汚れが付きやすい場所。掃除しやすい表面加工が、暮らしに合う場合がある。
建具も、反りや伸縮が少なく開け閉めが安定することに価値があるよ。
住宅営業柴田
本物感より、毎日の使いやすさを優先する場所もあると。
住宅事業部長奥柿
そう。全部を同じ思想で揃える必要はないんだ。
家族が長く触れるリビングの床は無垢。水まわりは手入れしやすい製品。建具は安定性を優先する。そんな使い分けでいい。
構造材も「無垢なら上」とは限らない
住宅営業柴田
柱や梁も、無垢材のほうが良いのでしょうか?
住宅事業部長奥柿
構造材は、好き嫌いより設計上必要な性能で判断するものだよ。
製材、集成材、LVLにはそれぞれ特徴がある。樹種、強度区分、含水率、寸法、品質管理を見ずに、「無垢だから強い」とは言えない。
住宅営業柴田
構造計算に合わせて、必要な材料を選ぶんですね。
住宅事業部長奥柿
その通り。見える床の好みと、建物を支える材料の選定は分けて考えたほうがいい。
構造材は、設計者が根拠を持って選び、図面や計算と一致していることのほうが大切だよ。
「自然素材だから健康」も、そこで止まらない
住宅営業柴田
自然素材のほうが、健康に良いというイメージもあります。
住宅事業部長奥柿
気持ちは分かるけど、「自然だから必ず安全」「工業製品だから危険」とは言い切れない。
建材にはホルムアルデヒド発散量の表示などがある。材料名のイメージではなく、塗料や接着剤も含めた製品情報を確認すべきだね。
住宅営業柴田
F☆☆☆☆なら、化学物質が完全にゼロという意味ですか?
住宅事業部長奥柿
違うよ。建築基準法上、ホルムアルデヒドの使用面積制限を受けない等級という意味であって、あらゆる物質がゼロ、誰にも症状が出ないという保証ではない。
だから表示の確認と換気、そして体質に不安があれば専門家への相談が必要だね。
値段の高さを、素材の優劣に置き換えない
住宅営業柴田
無垢材のほうが高ければ、やっぱり良い材料に感じます。
住宅事業部長奥柿
価格には、樹種、産地、選別、乾燥、歩留まり、加工、流通、塗装など、いろいろな要素が入っている。
高いことが魅力や希少性の表れになる場合はある。でも、高い材料が、必ず自分の暮らしに合うわけではないんだ。
住宅営業柴田
無垢材を採用すること自体が目的になってはいけないんですね。
住宅事業部長奥柿
そう。予算をかけるなら、その素材によって何が良くなるのかを説明できるようにしたい。
見た目、触り心地、補修性、手入れ、耐久性。自分たちが欲しい価値へお金を使うんだよ。
- 無垢材と書いてあるだけで、樹種や品質を確認しない
- 工場製品という理由だけで候補から外す
- 高い材料ほど長持ちすると決めつける
- ショールームの新品だけを見て、経年変化を確認しない
- 傷、反り、すき間をどこまで許容できるか話し合わない
- 床暖房、水まわり、ペットなどの使用条件を伝えない
- 手入れ方法や補修費用を確認しない
- 「自然素材だから健康」という説明だけで判断する
材料を決める前に聞きたい8つの質問
- この材料を、なぜこの場所に使うのですか?
- 無垢材と工業製品、それぞれの欠点は何ですか?
- 樹種、表面材、基材、塗装は何ですか?
- 傷、汚れ、水、熱、湿度にどう対応しますか?
- 5年後、10年後にどのような変化が考えられますか?
- 掃除、補修、再塗装、交換はどう行いますか?
- 施工条件とメーカー保証の対象範囲はどこまでですか?
- 差額を払うことで、自分たちの暮らしに何が増えますか?
住宅営業柴田
結局、無垢材と工業製品は、どちらが上なんでしょう?
住宅事業部長奥柿
上下ではないよ。役割が違うんだ。
無垢材の魅力が生きる場所には無垢材を使う。安定性や手入れのしやすさが必要な場所には、その性能を持つ製品を使う。それが適材適所だね。
今回のまとめ
無垢材には、木そのものの手触り、自然な木目、経年変化、補修しながら使える可能性など、工業製品では完全に同じにできない魅力があります。
一方で、木は湿度や乾燥によって動く材料です。反り、割れ、すき間、色の変化、傷などを理解し、樹種や乾燥状態、塗装、施工、室内環境まで含めて選ぶ必要があります。
複合フローリング、集成材、LVL、シート建材などは、単なる無垢材の代用品ではありません。寸法の安定、品質管理、掃除のしやすさ、床暖房対応など、目的に合わせて性能を持たせた製品です。ただし性能は製品ごとに違うため、名称だけで判断してはいけません。
無垢材か工業製品かという二択ではなく、どこで、誰が、どのように使うのかを考える。素材の良さと弱点を理解し、その家族に合う組み合わせを選ぶことが、本当の意味での良い材料選びです。
明工建設の考え方
明工建設では、自然素材か工業製品かというイメージだけで材料を決めるのではなく、設置場所、暮らし方、性能、手入れ、将来の補修、予算まで確認しながらご提案します。無垢材を使うことを目的にするのではなく、その素材が家族の暮らしにどのような価値を生むのかを大切にしています。
木質建材の性能、施工条件、保証内容は製品によって異なります。また、無垢材に生じた変化が素材特性か施工上の問題かは、現物を確認しなければ判断できません。採用前に仕様書と施工要領を確認し、不具合が疑われる場合は施工会社や専門家へ相談してください。
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