【仁藤流・住宅業界編】「60年保証」より「60年直せる家」?大手ハウスメーカーの長期保証で本当に確認したいこと

皆さま、おかげさまです。
明工建設 代表取締役、一級建築士の仁藤 衛です。

大手住宅メーカーの地域撤退についてのニュースがありました。

その中で、私自身、

「確かに。これは家を建てる前にもっと知っておくべきことだな」

と気づかされたことをよろしければお伝えします。

それが、

「長期保証」と「将来、その家を直せること」は別問題ではないか?

という考えです。

家づくりを検討していると、

「大手だから安心です」

「長期保証があります」

「60年サポートです」

といった言葉を耳にすることがあります。

もちろん、長期保証制度そのものを否定するつもりはありません。

むしろ、長期間住宅を維持管理する仕組みを用意することは大切です。

でも私は今回、

「60年」という数字だけを見て安心してしまっていいのだろうか?

と改めて考えました。

なぜなら家は、60年間「壊れないもの」ではないからです。

設備は交換します。

外壁や屋根もメンテナンスします。

家族構成も変わります。

そして30年後には、

「この壁をなくしたい」

「1階だけで暮らせるようにしたい」

「断熱改修したい」

「水まわりを移動したい」

という話も出てくるでしょう。

その時に重要なのは、

保証が残っているかだけではありません。

「この家を、誰が直せるのか?」

私は、こちらも非常に大切だと思うのです。


■「60年保証」は、60年間すべて無料という意味ではない

まず最初に知っていただきたいことがあります。

一般に「60年保証」「長期保証」といっても、

60年間、どんな故障でも無条件・無料で直してもらえる

という意味とは限りません。

保証対象となる部位。

初期保証期間。

定期点検。

指定されたメンテナンス。

有償工事。

保証延長の条件。

これらは会社や商品によって違います。

つまり、本当に見るべきなのは、

「何年保証か」ではなく、「どんな条件で、何を、誰が保証してくれるのか」

なんです。

住宅会社を比較するなら、

「A社60年、B社30年。だからA社の勝ち」

こんな単純な話ではありません。


■もう一つ見落とされやすいのが「改修の自由度」

そして今回、改めて考えさせられたのがここです。

住宅メーカーの中には、独自の構造システム、専用部材、型式認定等を活用して住宅をつくっているところがあります。

これは悪いことではありません。

工場生産による品質の安定。

施工の合理化。

独自技術。

研究開発。

大手住宅メーカーだからこそできる強みがあります。

一方で、

独自性が高い構造ほど、将来の改修時に確認すべきことが増える場合があります。

例えば30年後、

「ここの壁を取りたい」

と地元の工務店へ相談したとします。

普通の木造住宅と同じ感覚で、

「柱を抜いて梁を補強すればいいですね」

と簡単に判断できるとは限りません。

独自の構造システムなら、

その壁が構造上どんな役割を担っているのか。

どんな認定条件で成立しているのか。

どんな補強方法が認められているのか。

技術資料を確認しなければ責任ある判断ができないケースがあります。

だから工務店から、

「これは私たちの判断だけでは触れません」

と言われる可能性がある。

これは工務店の技術力不足とは限りません。

むしろ、

分からない構造を勝手に触らないことこそ、技術者としての責任

だと私は思います。


■ここで「撤退」という問題が出てくる

建てた住宅会社がずっと同じ地域にいるなら、

メーカーへ相談すればいい。

では、

その会社が地域の営業体制を縮小したら?

展示場を閉じたら?

支店を統合したら?

もちろん、

地域から拠点がなくなったからといって、直ちに保証そのものがなくなるわけではありません。

近隣拠点へ引き継ぐ。

専門部署で対応する。

協力会社を通してメンテナンスする。

企業によって対応方法は違うでしょう。

だからこそ私は、

「撤退したから保証は終わりだ」

と短絡的に言いたいわけではありません。

むしろ問いたいのはこちらです。

「拠点がなくなった後も、その保証は具体的にどう機能するのですか?」

ここなんです。


■「会社が存続する」と「地域にサービスが残る」は同じではない

これは住宅に限った話ではありません。

どんな大企業でも、

経営判断によって、

店舗を閉じる。

営業所を統合する。

サービスエリアを変更する。

商品から撤退する。

そういうことはあります。

つまり、

企業が存続することと、自分が暮らす地域で同じサービスが続くことは別問題

なんです。

だったら家を建てる前に、

「御社が60年後も存在しますか?」

という答えようのない質問をするより、

「この地域の拠点がなくなった場合、アフターサービスはどう引き継がれますか?」

と聞いた方がいい。

こちらなら、現在の仕組みとして答えてもらえます。


■そこで私が考えた。「60年保証」より「60年直せる家」

今回の一連の話を聞きながら、

私の中に一つの言葉が浮かびました。

「60年保証」より、「60年直せる家」。

これは大手住宅メーカーを否定するための言葉ではありません。

地元工務店にだって、

30年後に存在している保証はありません。

明工建設だって同じです。

どんな企業にも未来を100%約束することなどできません。

だからこそ、

会社だけに依存しない住宅の価値

も考えておく必要があるのではないでしょうか。


■家は「壊れないこと」以上に「直せること」が大切

車なら10年、15年で買い替える方もいるでしょう。

家は違います。

30年。

40年。

50年。

場合によっては子どもへ引き継ぐ。

そんな長寿命の商品です。

その間に、

暮らし方は必ず変わります。

だから、

「絶対壊れない家」

を目指すことも大切ですが、

同時に、

壊れた時に直せる。

古くなった時に交換できる。

暮らしが変わった時に改修できる。

そして、

次の技術者へ情報を渡せる。

これも住宅の重要な性能ではないでしょうか。


■私は図面を「家のカルテ」だと思っています

病院へ行った時、

過去の診療記録があると、

次の医師が判断しやすくなります。

家も同じです。

柱はどこ。

梁はどこ。

耐力壁はどこ。

基礎はどうなっている。

断熱材は何。

気密ラインはどこ。

配線はどこ。

給排水管はどこ。

換気ダクトはどこ。

どんな設備が付いている。

どんな修理をした。

私は、こうした情報を、

「家のカルテ」

だと考えています。

30年後、

仮に建てた会社と同じ担当者がいなくても、

カルテが残っていれば、

次の技術者が判断する材料になります。


■本当の資産価値とは「次の人が分かること」かもしれない

私はこれからの住宅では、

情報の資産価値

が非常に重要になると思っています。

住宅性能が高い。

それだけではない。

「どうやってその性能を実現したか」が残っている。

図面がある。

計算書がある。

施工記録がある。

気密測定結果がある。

設備履歴がある。

修繕履歴がある。

これなら、

次の技術者へバトンを渡せます。

家をブラックボックスにしない。

これは長寿命住宅を考えるうえで、とても大切なことだと思います。


■契約前に聞いてほしい「5つの質問」

そこで、これから住宅会社を選ぶ方におすすめしたい質問があります。

  1. 長期保証を継続するために必要な点検・有償メンテナンスは何ですか?
  2. 他社で修理やリフォームを行った場合、保証範囲はどう変わりますか?
  3. 将来、構造に関わるリフォームをする場合、他社でも対応できる仕組みですか?
  4. 構造図・設備図・施工記録などは施主にも引き渡され、将来利用できますか?
  5. この地域の営業・サービス拠点が統合された場合、点検・修理は誰が担当しますか?

「保証は60年です」

だけではなく、

ここまで聞く。

その回答を聞いてから、

自分にとっての“安心”を判断する。

私はそれでいいと思います。


■そして、これは地場工務店にも同じ質問をしてください

ここは非常に重要です。

「じゃあ大手はやめて、工務店なら安心ですね」

違います。

そんな単純な話ではありません。

地域工務店なら、

「社長が自分で全部知っています!」

という会社もあります。

一見安心ですよね。

でも、その社長が引退したら?

施工方法が職人の頭の中にしかなかったら?

図面が残っていなかったら?

後継者がいなかったら?

これも、

別の意味でのブラックボックスです。

だから、

大手か工務店かではありません。

会社の大きさではなく、

情報が残るか。

技術が継承できるか。

仕組みになっているか。

ここを見る。


■それでも地域工務店には、一つ大きな強みがある

それが、

お客様と同じ地域で生きていることです。

これは私自身、強く感じています。

スーパーへ行けば、

OBのお客様に会うことがあります。

街を走れば、

明工建設で建てた家の前を通ります。

地域の中で、

私たちの仕事が毎日見られている。

これは、ある意味ものすごく厳しい(笑)。

いい加減な仕事をして、

翌日から別の街へ行けばいい。

私たちは、そんな仕事の仕方ができません。

だから以前、

「地域工務店の強みは逃げられないこと」

と書きました。

でも、より正確に言うなら、

「地域で仕事を続ける以上、一棟一棟の仕事が次の仕事につながっている」

ということです。


■保証書より先に「困った時の顔」が浮かぶか

台風の後。

地震の後。

水漏れ。

給湯器の故障。

玄関の不具合。

家で本当に困る時は、

平日の午前10時とは限りません。

その時、

「どこへ電話したらいいんだろう?」

ではなく、

相談する相手の顔が浮かぶ。

これは、保証年数では表現しにくい価値です。

もちろん地域工務店だから24時間即時対応できる、という意味ではありません。

災害時には私たち自身が被災する可能性もあります。

できないことを「できます」と約束することは、安心ではありません。

大切なのは、

困った時に相談先が明確で、できること・できないことを含めて顔の見える関係が続いていること。

私は、それが地域住宅会社の大きな役割だと思っています。


■「高性能住宅」も同じです。言葉ではなく中身を見る

私はこの話、

断熱や気密とまったく同じだと思っています。

「高断熱です」

と言われたら、

UA値を確認する。

「高気密です」

と言われたら、

C値を確認する。

そしてC値なら、

実際にその家で気密測定をしているか

を確認する。

耐震なら、

耐震等級という言葉だけでなく、

どう確認しているのかを見る。

長期保証も同じ。

「60年」

という数字だけを見るのではなく、

その数字を成立させている仕組みを見る。

ここなんです。

なお、UA値は設計・仕様から算定する指標で、C値は完成する建物の施工結果を現場測定する指標です。すべての住宅性能を「実測値」で評価するわけではありません。

大切なのは、

評価できるものを、適切な方法で確認しているか。

です。


■「大手だから安心」も「地元だから安心」も、一度疑ってみる

私は家づくりをするとき、

「常識を一度疑ってみる」

ことが大切だと思っています。

大手だから安心。

本当でしょうか。

地元工務店だから安心。

これも本当でしょうか。

60年保証だから安心。

では、その保証条件は?

高性能住宅だから快適。

では、実際の設計と施工は?

言葉を疑うというのは、

相手を信用しないということではありません。

安心の根拠を確認することです。

むしろ、

根拠まで説明してもらって納得した方が、

住宅会社との信頼関係は強くなると思います。


■仁藤流の結論。「会社を選ぶ」のではなく「未来まで続く仕組みを選ぶ」

今回の大手住宅メーカーの地域撤退の記事から、

私は思いがけず大切なことを考えさせてもらいました。

家を選ぶ時、

私たちはどうしても、

会社名。

ブランド。

価格。

デザイン。

保証年数。

という「今見えるもの」で比較します。

でも、

家は今日のためだけにつくるものではありません。

30年後を想像してください。

あなたは何歳でしょう。

子どもは独立しているでしょうか。

夫婦二人になっているかもしれない。

1階だけで暮らしたくなっているかもしれない。

その時、

壁を一枚動かしたい。

設備を交換したい。

断熱改修したい。

そんなことが起きた時、

「この家、誰なら直せるんだろう?」

とならない家をつくる。

私は、それが大切だと思っています。

だから、

「60年保証」だけではなく、「60年直せる家」という視点を持つ。

会社が変わっても。

担当者が変わっても。

時代が変わっても。

住宅の情報が残り、

技術者が判断でき、

適切に手を入れながら住み継いでいける。

それは、

派手なキッチンよりも、

大きなテレビよりも、

30年後にはずっと価値のある住宅性能かもしれません。


最後に、家づくりを検討している方へ。

住宅会社の担当者に、

「何年保証ですか?」

と聞く前に、

一度こう聞いてみてください。

「30年後、この会社以外でも、この家をきちんと直せますか?」

その質問に対して、

どんな答えが返ってくるのか。

そして、

図面や保証条件を見せながら具体的に説明してくれるのか。

そこには、

その住宅会社の家づくりに対する考え方が表れると思います。

家を建てるのは住宅会社です。

でも、

その家の主役は、住宅会社ではありません。

これから何十年もそこで暮らす、

お客様とご家族です。

だから私は、

家の主導権も、

未来の選択肢も、

できる限りお客様の側に残る家づくりをしたい。

そして30年後、

街でお客様にお会いした時、

お互い笑顔で、

「この家でよかったですよ」

と言っていただける。

それが私にとって、

保証書に書かれた年数以上に価値のある“長期保証”です。

ご縁を大切に唯一無二の家造り。

住んでからがお付き合いの始まり。

おかげさまでありがとうございます。

「60年保証」より「60年直せる家」?大手ハウスメーカーの長期保証で本当に確認したいこと - YouTube

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