
もし、わが子が家を建てるなら。
第5回|オシャレにこだわれ。
「家は見た目より性能が大切」「オシャレなデザインも、いずれ古くなる」。家づくりでは、そんな言葉を耳にすることがあります。
もちろん、安心して快適に暮らせる性能は欠かせません。しかし、それを理由にデザインへのこだわりを諦めてよいのでしょうか。
明工建設の住宅事業部長・奥柿は、はっきり「それはナンセンスだ」と言います。多額の住宅ローンと責任を引き受けて持つ家だからこそ、見るたびにうれしくなり、所有して良かったと思えるオシャレさへ、とことんこだわってほしい。その理由を、住宅営業の柴田が聞きました。
住宅営業柴田
奥柿さん、もしお子さんが「性能と予算を優先して、見た目は普通でいい」と言ったら、どう答えますか?
住宅事業部長奥柿
私は「それで本当に、完成した家を好きになれるのか」と聞きます。そして、オシャレには、とことんこだわりなさいと伝えます。
性能が大切なのは当然です。耐震、断熱、耐久性など、家族が安心して暮らすための土台は確保しなければいけません。でも、性能が大事だから、見た目はどうでもいいという話にはなりません。
家は毎日見て、触れて、長い時間を過ごす場所です。外から帰ってきたときに好きだと思える。リビングに座ったときに落ち着く。友人を招いたときに少し誇らしい。そういう気持ちは、暮らしの満足をつくる大切な価値です。
「オシャレは古くなるから不要」は、ナンセンス
住宅営業柴田
ただ、今オシャレに見えるデザインも、10年後、20年後には古く感じる可能性がありますよね。
住宅事業部長奥柿
時代が変われば、流行も変わります。どんなデザインでも、建てた年代を感じることはあるでしょう。でも、「いつか古くなるかもしれないから、最初からこだわらない」というのはナンセンスです。
服も車も家具も、その時点で自分が好きだと思うものを選びますよね。何十年先にも最新であることより、今から長く大切にしたいと思えるかが重要です。
それに、流行だけを寄せ集めることと、自分が思うオシャレを追求することは違います。SNSで人気だから採用するのではなく、色、素材、明るさ、空間の雰囲気を自分の感覚で選ぶ。自分の価値観に根ざしたデザインは、流行が変わっても簡単には嫌いになりません。
古く見えない家を目指すより、古くなっても好きでいられる家を目指すべきだと思います。
家は、暮らしをつくる大切なアイテム
住宅営業柴田
奥柿さんは、よく「家は暮らしをつくるアイテム」と話していますね。
住宅事業部長奥柿
そうです。家を建てること自体が人生の目的ではありません。家は、その後の暮らしを良くするためのアイテムです。
でも、アイテムにすぎないから見た目はどうでもいい、ということではありません。毎日使う道具ほど、機能だけでなく好きだと思えるものを選んだほうが、使う時間が楽しくなります。
キッチンに立つたびに好きな色や素材が目に入る。朝、光が入ったリビングを見て気持ちが上がる。玄関を開けた瞬間に「この家を選んで良かった」と思える。オシャレは飾りではなく、日常の気分を支える機能でもあるんです。
家というアイテムがオシャレであればあるほど、所有する喜びは高くなる。私はそう考えています。
住宅を持つ責任を上回る、喜びが必要
住宅営業柴田
「所有する喜び」という言葉には、どんな意味がありますか?
住宅事業部長奥柿
住宅を持つことは、うれしい反面、大きな責任を背負う行為です。多額の住宅ローンを返し、建物を維持し、固定資産税なども負担します。簡単に買い替えられるものでもありません。
それでも私が住宅を持つことを勧めるのは、その責任以上の価値があると考えているからです。家族が安心して帰れる場所、自分たちの暮らしに合わせた空間、子どもとの記憶、将来への安心。そこに所有する喜びも加わります。
負担だけが強く感じられる家では、年月がたつほど「ここまでして建てる必要があったのか」と思うかもしれません。反対に、見るたび、使うたびに好きだと思える家なら、ローンを返す意味や手入れする意味を感じられます。
家が持つ価値を高めることが、建てた後の後悔を減らす。オシャレへのこだわりは、その価値を高める大きな要素です。
- 帰宅するたびに、自分の家を好きだと思える
- 毎日の家事や団らんの時間が、少し楽しくなる
- 所有する喜びが、住宅ローンや維持への納得につながる
- 手入れをしながら、長く大切にしたいと思える
何百棟も見てきて感じる、満足度の違い
住宅営業柴田
実際に家を引き渡した後も、オシャレさは満足度に影響していると感じますか?
住宅事業部長奥柿
私はこれまで何百棟という家のお引き渡しに関わってきました。その経験で言えば、完成したときに私たちも「本当にオシャレだな」と感じた家のほうが、その後のお客様の満足度も高い傾向があります。
もちろん、これはデザインだけで満足が決まるという意味ではありません。暮らしやすさ、性能、施工品質、対応も欠かせません。その土台があるうえで、お客様自身の好きがきちんと形になった家は、喜び方が違うんです。
お引き渡しのときに何度も室内を見回す。家具が入った写真を送ってくださる。友人を招いた話や、季節ごとの飾り付けを楽しんでいる話をしてくださる。家への愛着が、暮らしの行動に表れます。
設計や打ち合わせは大変でも、そのこだわりが完成後の長い満足に変わる。その姿を何度も見てきたからこそ、わが子にも妥協してほしくありません。
オシャレとは、高価なものを並べることではない
住宅営業柴田
オシャレにこだわると、建築費が大きく上がりませんか?
住宅事業部長奥柿
高価な素材や設備を選べば、当然費用は上がります。でも、オシャレとは高いものをたくさん使うことではありません。
色数を絞る。窓や扉の高さをそろえる。照明の位置を整える。家具を置いた状態まで考えてコンセントや収納を計画する。見せたいものと隠したいものを分ける。こうしたことは、必ずしも大きな追加費用が必要ではありません。
むしろ、何となく選んだものを後から足し続けるほうが、費用もデザインもまとまりにくくなります。最初に目指す雰囲気と優先順位を決めれば、予算を使う場所と抑える場所が見えてきます。
全部を豪華にするのではなく、自分が毎日うれしくなる場所へ、意識して予算を使う。それがオシャレへの賢いこだわり方です。
こだわる場所と、整える場所を分ける
住宅営業柴田
限られた予算の中では、どこへこだわると効果が高いでしょうか?
住宅事業部長奥柿
家族が長く過ごし、何度も目にする場所から考えます。玄関を開けた正面、LDK、キッチンから見える景色、洗面、外から見た家の正面などです。
たとえばLDKでは、床、壁、天井、建具、キッチン、家具、照明を別々に選ばず、一つの景色として考える。主役を一つ決め、それ以外は引き立てるように整えます。
反対に、収納の内部や目立たない場所まで同じように費用をかける必要はありません。見える場所はラインや色を丁寧にそろえ、見えない場所は使いやすさと価格を優先する。
オシャレにこだわるとは、すべてを高級にすることではなく、どこを見たときに心が動く家にするかを決めることです。
オシャレと暮らしやすさを、対立させない
住宅営業柴田
見た目を優先して、暮らしにくい家になってしまう心配はありませんか?
住宅事業部長奥柿
そこは注意が必要です。写真では美しくても、掃除しにくい、収納が足りない、暗い、家具が置けないとなれば、暮らすほど不満が出ます。
ただ、それはオシャレが悪いのではなく、見た目と暮らしを別々に考えたことが問題です。本当に良いデザインは、暮らしの邪魔をしません。
生活用品が無理なく収まり、配線が目立たず、掃除しやすく、自然に片付いた状態を保てる。窓から見える景色と外からの視線を両方考える。照明の美しさと、作業に必要な明るさを両立する。
使いやすいから美しく保てる。美しいから大切に使いたくなる。その循環をつくるのが住宅設計です。
「好き」を言葉にする作業から逃げない
住宅営業柴田
自分の好きなデザインが分からない場合は、どうすればよいでしょうか?
住宅事業部長奥柿
好きな写真を集めるところから始めればいいです。家だけでなく、カフェ、ホテル、服、家具、器でも構いません。そして、何が好きなのかを一つずつ考えます。
明るい色が好きなのか、陰影のある落ち着いた空間が好きなのか。木の温かさか、石や金属の緊張感か。物を飾りたいのか、何も見せないすっきりした空間が好きなのか。
同時に、嫌いなものも集めます。「なぜか落ち着かない」「この色の組み合わせは苦手」という感覚も、方向を決める大切な情報です。
家族で好みが違う場合は、どちらかが我慢するのではなく、共通して好きな要素を探す。設計者やコーディネーターへ「いい感じに」と丸投げせず、自分の感覚を伝える努力をしてください。
- 思わず保存した写真の、どこが好きなのか
- 明るい空間と落ち着いた空間の、どちらが心地よいか
- 家の中で、最も美しく見せたい場所はどこか
- 生活用品を見せたいか、できるだけ隠したいか
- 10年後も残したいと思える「自分らしさ」は何か
決めるのが大変でも、最後までこだわる
住宅営業柴田
家づくりでは決めることが多く、途中で疲れて「もうお任せでいい」となりがちです。
住宅事業部長奥柿
本当に大変だと思います。外壁、床、壁紙、建具、設備、照明、スイッチ、家具。細かな選択が続き、何が正解か分からなくなることもあります。
だから最初に全体のコンセプトと、譲れない場所を決めておくんです。迷ったときは、そのコンセプトへ戻る。すべてを一人で考えず、設計者やコーディネーターへ相談し、選択肢を整理してもらうことも大切です。
ただし、最後の「好きかどうか」まで人へ任せてはいけません。そこで暮らすのは自分たちだからです。
建築中の数か月の大変さより、完成後に暮らす何十年のほうが圧倒的に長い。だから私はわが子に、大変でも、自分が思うオシャレから逃げるなと伝えます。
性能の先にある、愛着まで設計する
住宅営業柴田
最後に、これから家のデザインを考える方へ伝えたいことをお願いします。
住宅事業部長奥柿
性能を確保する。予算を守る。暮らしやすくする。どれも家づくりの土台です。でも、土台だけでは「この家を持てて良かった」という感情までは生まれません。
好きな外観、好きな空間、好きな素材があり、毎日の何気ない瞬間に満足できる。その愛着が、住宅を持つ価値を高めます。
誰かがオシャレだと言う家でなくていいんです。流行のすべてを入れる必要もありません。自分たちが見て、触れて、暮らして「これが好きだ」と思える家にしてください。
性能か、オシャレかではありません。性能も、暮らしやすさも、オシャレも、全部がそろって初めて自分の家です。
今回のまとめ
家づくりでは性能や予算が重要ですが、それを理由にデザインへのこだわりを諦める必要はありません。家は家族の暮らしをつくるアイテムであり、毎日見て使うものです。好きだと思える外観や空間は、所有する喜びと暮らしの満足を高めます。
オシャレにこだわることは、高価な素材や流行の設備を並べることではありません。色や素材を整理し、窓・建具・照明のラインを整え、生活用品が無理なく収まるよう計画する。限られた予算を、毎日目にする場所や心が動く場所へ使うことです。
見た目と暮らしやすさも対立するものではありません。使いやすいから美しく保つことができ、美しいから長く大切に使いたくなります。性能、機能、デザインを一つの暮らしとして考えましょう。
打ち合わせで決めることが多くても、自分の「好き」を人任せにしないこと。流行に合わせるのではなく、自分たちが何年たっても好きでいられるオシャレを言葉にし、最後までこだわることが、建てた後の後悔を減らします。
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