
もし、わが子が家を建てるなら。
第2回|土地を購入するなら、どんな土地? 営業の私が子どもに勧めない土地とは?
駅に近い。南向き。日当たりが良い。整形地で、価格も相場より安い――。土地情報には、魅力的に見える言葉が並びます。
しかし、その土地が「一般的に良い土地」であっても、あなたの家族にとって良い土地とは限りません。土地は眺めるためでも、所有すること自体を目的に買うものでもなく、そこで望む家を建て、望む暮らしを実現するために買うものだからです。
今回は明工建設の住宅事業部長・奥柿に、もしわが子が土地を探すなら、どんな順番で考えさせるのか。そして、どのような土地選びを絶対に勧めないのかを、住宅営業の柴田が聞きました。
住宅営業柴田
奥柿さん、今回は土地選びです。もしお子さんから「家を建てたいから、良い土地を探している」と相談されたら、最初に何を伝えますか?
住宅事業部長奥柿
まず、土地は家を建てるために買うものだということを、絶対に忘れないように言います。
当たり前に聞こえるでしょう。でも土地を探し始めると、いつの間にか「条件の良い土地を手に入れること」が目的になってしまう人が本当に多いんです。駅から何分、南向き、何坪、価格はいくら。数字を比較しているうちに、そこでどんな家を建て、どんな毎日を送りたかったのかが抜け落ちてしまいます。
土地は家づくりのゴールではありません。そこで始まる暮らしの土台です。だから、土地だけを見て良い・悪いを決めてはいけません。
不動産屋さんの「良い土地」が、自分にも良いとは限らない
住宅営業柴田
土地のプロである不動産会社から「これは良い土地です」と勧められたら、安心してもよいように思います。
住宅事業部長奥柿
不動産会社が間違っているという意味ではありません。不動産の視点では、売りやすい、資産価値を説明しやすい、周辺相場に対して価格が妥当、生活利便性が高い。そうした評価があります。どれも大切です。
ただし、不動産として評価が高いことと、自分たちが希望する家を無理なく建てられることは別の話です。
たとえば駅に近い土地でも、在宅勤務が中心で車移動が多い家族なら、駅距離より静かさや庭の広さが重要かもしれません。南向きでも、人通りの多い道路に大きく面していれば、視線が気になってカーテンを開けられないかもしれない。整形地でも、希望する平屋と駐車台数を入れたら庭が取れないことがあります。
「一般的に人気がある」ことは参考になります。でも、人気の条件が自分たちの暮らしに必要かは、別に考えなければいけません。
住宅営業柴田
つまり、「良い土地」という言葉には、人によって違う基準があるということですね。
住宅事業部長奥柿
そうです。共働きで送り迎えがある家族と、自宅で仕事をする家族では、便利な場所が違います。子どもと庭で過ごしたい家族と、休日は外出することが多い家族では、必要な敷地の広さも違います。
不動産屋さん、住宅会社、銀行、親御さん。それぞれが良かれと思って意見をくれます。ただ、最後にその土地で暮らすのは本人たちです。だから私なら、誰かの「良い」に乗る前に、自分たちにとっての「良い」を言葉にしなさいと伝えます。
- 新しい家で、今より何を良くしたいのか
- 平日と休日を、どこでどのように過ごしたいのか
- 立地・建物・庭・通勤・学区・予算のうち、何を優先するのか
そもそも、家を建てて何がしたかったのか?
住宅営業柴田
自分たちにとっての「良い土地」を考えるには、どこから始めればよいでしょうか?
住宅事業部長奥柿
「なぜ家を建てたいと思ったのか」まで戻ることです。今のアパートが狭いから、だけでは足りません。広くなった家で何をしたいのか。子どもをどんな環境で育てたいのか。家族にどんな時間を増やしたいのかまで考えます。
たとえば、「休日に家族や友人と庭で食事をしたい」「子どもが周囲を気にせず遊べる場所が欲しい」「家事を早く終えて家族で過ごしたい」「将来も安心して暮らせる居場所が欲しい」。家が欲しいのではなく、その先にある時間や安心が欲しかったはずです。
私はお客様にも、間取りや土地の条件を聞く前に、その家でどんな未来をつくりたいのかを聞きます。そこが分からなければ、土地の良し悪しも判断できません。
「欲しい家」が具体的になると、土地の見え方が変わる
住宅営業柴田
暮らしの希望を整理すると、実際の土地選びはどう変わりますか?
住宅事業部長奥柿
優先順位が変わります。家族で庭を楽しむことが一番なら、駅から数分遠くなっても、建物と庭をゆったり配置できる土地のほうが良いかもしれません。家事時間を減らしたいなら、土地の形より、希望する動線の建物が無理なく入るかが重要になります。
逆に、共働きで通勤時間を短くすることが家族の時間を生むなら、駅に近い土地へ予算を使う価値があります。庭が小さくなっても、その家族にとっては正解です。
大事なのは、条件をたくさん満たす土地ではありません。自分たちが最も叶えたい未来を、一番実現しやすい土地が良い土地です。
住宅営業柴田
すべての希望を叶えられる土地を探し続けるのは、良くないのでしょうか?
住宅事業部長奥柿
希望を持つのは良いことです。ただ、場所、広さ、形、日当たり、価格、学区、交通、周辺環境を全部満たす土地は、簡単には出ません。出たとしても、予算を大きく超える可能性があります。
条件を増やし続けると、良い候補が出ても小さな欠点ばかりが見え、決められなくなります。反対に、焦って優先順位を決めないまま買うと、あとで本当に欲しかった暮らしを入れられない。
譲れない条件を2つか3つに絞り、その理由を家族で共有する。その他の条件は、建物の設計で補えるかを考える。土地だけで100点を探さず、土地と建物を合わせて100点に近づけるという考え方が必要です。
土地だけ先に決めるのは、絶対に勧めない
住宅営業柴田
人気の土地は早く売れるので、「まず土地を押さえてから住宅会社を決めよう」と考える方もいます。
住宅事業部長奥柿
そこが、私がわが子には絶対に注意するところです。土地は、買った後で位置や形を変えられません。先に土地へ大きな予算を使い、残った金額で建物を考えると、希望していた広さや性能、間取りを諦めることになりかねません。
土地の価格以外にも、造成、地盤、上下水道、擁壁、外構など、建てるために必要な費用が出る場合があります。土地情報の金額だけを見て「予算内」と判断してはいけません。
だから、土地候補が出た段階で住宅会社にも見てもらい、希望する建物が入るか、建築にどんな条件や費用があるかを確認する。土地、建物、付帯工事、諸費用を含めた総額を見てから判断します。
土地・建物・予算は、同時に動かす
住宅営業柴田
具体的には、どのような順番で進めればよいのでしょうか?
住宅事業部長奥柿
最初に、無理のない総予算を決めます。次に、叶えたい暮らしと建物のおおよその規模・性能を整理し、建物側に必要な予算を把握します。そのうえで、土地へ使える金額を考えます。
土地候補が見つかったら、住宅会社が配置計画をつくり、駐車場、庭、建物、隣地との距離などを確認します。同時に、その土地特有の工事費や法的な条件も調べます。その結果を総予算へ戻して、無理がないかを見るんです。
これは一直線の順番ではなく、土地と建物を行ったり来たりしながら調整します。土地が少し高くても建築しやすく追加費用が少ないこともあれば、安い土地でも造成費などを加えると高くなることがあります。土地価格ではなく、そこで家を完成させるまでの総額で比較してください。
- 家族が無理なく返していける、家づくり全体の予算
- 希望する建物・駐車場・庭を入れた配置の確認
- 土地代以外に必要となる工事・諸費用を含めた資金計画
一見マイナスの土地が、良い土地になることもある
住宅営業柴田
一般にはあまり人気がない土地でも、その家族には良い土地になることがありますか?
住宅事業部長奥柿
あります。たとえば北側道路の土地でも、南側に落ち着いた庭を設けやすく、道路からの視線を避けたLDKを計画できることがあります。形に特徴がある土地でも、その形を生かして駐車場と庭を分けられる場合があります。
もちろん、どんな土地でも設計で解決できるとは言いません。追加費用や制約が大きく、希望する家に合わない土地もあります。ただ、広告に書かれた方角や形だけで候補から外すのは早い。建物を置いて初めて、その土地の価値が見えることがあります。
反対に、誰が見てもきれいな整形地でも、周囲からの視線、車の出入り、隣家の配置まで考えると、希望する暮らしに合わないこともある。土地は条件表ではなく、建物が建ち、家族が暮らしている状態まで想像して評価します。
営業の私が、わが子に勧めない土地選び
住宅営業柴田
ここまでの話を踏まえて、奥柿さんがわが子に絶対に勧めない土地選びを整理すると、どのようなものですか?
住宅事業部長奥柿
一つ目は、家族の暮らしを話し合わず、「駅近」「南向き」「広い」といった一般的な人気条件だけで選ぶこと。
二つ目は、不動産会社や周囲の「良い土地」という評価を、自分たちの判断にそのまま置き換えること。
三つ目は、希望する建物が入るか、追加工事がいくらかかるかを確認せず、土地だけ先に契約すること。
そして一番いけないのは、土地に予算を使いすぎた結果、家を建てる本来の目的を諦めることです。家族が集まるLDKが欲しかったのに小さくする。安心できる性能を求めていたのに削る。庭で過ごしたかったのに庭が取れない。これでは何のために土地を買ったのか分かりません。
住宅営業柴田
土地を見に行ったとき、本人たちが現地で確認すべきことはありますか?
住宅事業部長奥柿
土地の中だけでなく、周囲を歩いてください。朝と夕方で車や人の流れがどう変わるか。買い物や通学の道は安全か。隣家の窓や玄関はどこを向いているか。音やにおいは気にならないか。雨の日に水がどこへ流れるか。できれば時間や天候を変えて見ると良いです。
ただし、本人だけで分からない建築上の条件もあります。そこは住宅会社や専門家に確認してもらう。自分の目で暮らしを確かめ、専門家の目で建てられるかを確かめる。その両方が必要です。
奥柿がわが子に渡す、土地選びの5つの質問
- この家で、一番叶えたい暮らしは何か?
- その暮らしは、この土地と建物の組み合わせで本当に叶うか?
- 土地代以外の費用を含めても、総予算を超えないか?
- 人気や他人の評価ではなく、自分たちの優先順位で選んでいるか?
- 5年後、10年後も、この場所を選んだ理由を説明できるか?
最も高く評価される土地ではなく、最も未来が叶う土地を
住宅営業柴田
最後に、これから土地探しを始める方へ伝えたいことをお願いします。
住宅事業部長奥柿
土地探しは、点数の高い土地を当てるゲームではありません。家族ごとに正解が違います。一般的な評価で80点の土地でも、望む暮らしが一番叶うなら、その家族にとっては100点です。
土地を見つけてから家を考えるのではなく、暮らしを考え、建物を考え、予算を考えながら土地を見る。この順番を守れば、広告の言葉や周囲の評価に振り回されにくくなります。
私はわが子なら、「この土地が好きか」だけではなく、この土地でつくれる未来を、本当に好きだと思えるかを聞きます。その答えに迷いがない土地なら、初めて購入を勧めます。
今回のまとめ
土地は、家を建て、家族が望む暮らしを実現するために購入するものです。駅から近い、南向き、整形地、価格が安いといった条件は判断材料になりますが、それだけで自分たちにとって良い土地とは決まりません。
まず考えるべきなのは、なぜ家を建てたいと思ったのか、そこで何をしたいのか、どんな時間や未来が欲しいのかです。その希望を最も叶えやすい土地が、その家族にとっての良い土地です。
土地選びは、土地だけを先に進めてはいけません。希望する建物、配置、駐車場、庭、必要な工事、諸費用、無理のない総予算を同時に検討する必要があります。土地代が予算内でも、建物や追加工事を含めた総額が膨らみ、本来欲しかった家を諦めることになれば、本末転倒です。
不動産会社の評価も、住宅会社の提案も大切な情報です。しかし、最後の判断基準は「自分たちが望む未来を、この土地で実現できるか」。土地と建物を一緒に考え、家族の優先順位と総予算の両方に納得できてから購入を決めましょう。
明工建設が選ばれる理由とは?
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