住宅は建てる時より、暮らし始めてから差が出る。耐震等級3だけでは終わらない家づくりを、一級建築士・仁藤衛が考えます

おかげさまです。明工建設の仁藤です。
先日、気になる記事を読みました。
「一流ハウスメーカーでも震度7に耐えられないことがある」
そんな内容の記事です。
皆さん、どう思われますか?
何千万円も出して家を建てる。
テレビでもよく見る有名な会社。
立派な展示場があって、営業担当者も丁寧で、耐震実験の映像まで見せてくれる。
それなのに、大きな地震が来たら壊れることがある。
「じゃあ、何を信じて家を建てればいいんですか?」
そう思われる方もいるでしょうね。
私も建築屋として、この記事は気になりました。
ただ、読みながら少し違うことも考えていたんです。
地震で家が壊れるかどうかも大事だけれど、地震が終わった後、その家族はどうやって暮らすんだろう?
今日はそんな話をしてみたいと思います。
熊本地震で、本当に何が起きたのか
今回読んだのは、2026年10月6日に公開されたダイヤモンド不動産研究所の記事です。
2026年7月の熊本地震を受け、SNSに投稿された住宅被害の情報をどう受け止めるべきか、という内容でした。
私はある記事を読んで、10年前の熊本地震のことも思い出しました。
2016年4月の熊本地震です。
4月14日に最大震度7。
そして16日にも最大震度7。
同じ地域が非常に強い揺れに繰り返し襲われました。
建築研究所などの調査では、木造住宅だけでなく、鉄骨造や鉄筋コンクリート造、基礎、地盤、設備などにも被害が確認されています。
ここで、ちょっと考えてほしいんです。
住宅会社の耐震実験では、建物が大きく揺れても倒れなかった、という映像を見ますよね。
あれは大切な実験です。
でも、実際の地震は実験映像のように都合よく終わってくれません。
最初の大きな揺れで建物が傷む。
その後に余震が来る。
さらに強い揺れが来ることもある。
地盤が動く。
配管が壊れる。
窓や外壁が損傷する。
つまり、
一度の大地震で倒れなかったことと、その後も安心して住み続けられることは、同じではないんです。
私はここが、これからの家づくりで非常に大切だと思っています。
耐震等級3の家は、本当に強かったのか?
ここは感情論ではなく、実際の調査結果を見てみましょう。
2016年の熊本地震について、国土交通省などが調査した益城町の対象エリアでは、住宅性能表示制度による耐震等級3の木造住宅16棟が確認されています。
その結果は、
2016年熊本地震・益城町の調査対象住宅
無被害
14棟
軽微または小破
2棟
対象16棟では倒壊・大破が確認されませんでした。ただし、調査対象は限られており、すべての地震で無被害を保証する結果ではありません。
この数字をどう考えますか?
私は、耐震等級3を採用する大きな根拠になると思っています。
ただし、
「耐震等級3だから絶対に大丈夫」
とは言いません。
そんなことは建築屋として言えないんです。
地震の揺れ方も違います。
建物の形も違う。
地盤も違う。
施工の状態も違う。
でも、だからといって数字が意味を持たないわけではありません。
安心を願うだけではなく、安心につながる根拠を積み重ねる。
私はそういう家づくりをしたいんです。
「耐震等級3相当」と「耐震等級3」は、同じなのでしょうか?
住宅展示場で、
「うちは耐震等級3相当です」
と言われたことはありませんか?
これ、ぜひ聞いてみてください。
「相当というのは、どういう意味ですか?」
「どの方法で構造を検討していますか?」
「第三者の評価書は取得できますか?」
私は構造計算、特に許容応力度計算による検証を重視しています。
建物にかかる力を考え、柱や梁、接合部、基礎まで整合性を確認していくためです。
ただし、許容応力度計算をしていなければ必ず危険という話でもありません。建物の規模や構造によって適用される検証方法は異なります。
大切なのは、どんな方法で安全性を確認し、それをどんな書類で説明できるかです。
そしてもう一つ。
設計図が正しくても、現場がその通りにつくられていなければ意味がありません。
柱と梁の接合部。
耐力壁の配置。
金物。
釘の種類や間隔。
基礎と土台の緊結。
こういう部分は、完成したら見えなくなってしまいます。
だから施工中の検査や記録が大切なんです。
私はよく思うんですよ。
完成した家を見て「きれいですね」と言っていただくのは、もちろん嬉しい。
でも、本当に見てほしいものの多くは、壁の中に隠れているんです(笑)。
大手ハウスメーカーだから安心。地元工務店だから不安。本当にそうでしょうか?
私は、大手ハウスメーカーの家が弱いと言いたいわけではありません。
大手には大手の良さがあります。
研究開発。
品質管理。
施工の標準化。
保証制度。
長年積み重ねてきた技術。
素晴らしいと思う部分もあります。
反対に、地元工務店だからすべて安心というわけでもありません。
会社の規模と、一棟一棟の構造安全性は別の話です。
では、何を見ればいいのか。
私は、
「この会社は、なぜこの家が地震に強いと言えるのか。その根拠をお客様に説明できるか」
だと思っています。
ブランド名ではなく、設計と施工と記録。
ここを見てほしいですね。
地震に強い家でも、土地が動けばどうなるのか
掛川や菊川、御前崎、牧之原で家づくりをしていると、同じ市内でも土地の条件が違うことを感じます。
海に近い場所。
丘陵地。
造成地。
昔から住宅が建っていた土地。
田んぼを埋め立てた土地。
土地は一つとして同じではありません。
例えば、いくら建物の構造を強くしても、地盤が大きく変形したり、擁壁が崩れたりすれば、建物にも影響します。
2016年の熊本地震でも、地盤や擁壁の被害が確認されています。
だから私は、家づくりは土地探しから始まっていると思うんです。
間取りが入るか。
駐車場が何台取れるか。
日当たりがいいか。
もちろん大事です。
でも、その前に、
「この土地はどんな履歴を持っているのか?」
「地盤調査で何が分かったのか?」
「地震のとき、周辺はどうなるのか?」
「液状化や土砂災害、津波、浸水などのリスクは?」
ここを考える。
家は地面の上に建っている。
当たり前のことですが、建物の性能ばかり見ていると、意外と忘れてしまうんです。
制震ダンパーを付ければ安心、という話でもありません
明工建設では、耐震性能に加えて制震技術も重視しています。
例えば、制震ダンパー。
揺れによって建物が変形するとき、そのエネルギーの一部を吸収する仕組みです。
私はこれを、自動車のサスペンションに少し似た考え方だと思っています。
車の骨格がしっかりしていること。
そして走行中の振動をうまく抑えること。
役割が違いますよね。
住宅も同じです。
まず、しっかりした構造。
そのうえで、制震装置をどう生かすか。
ただし、制震ダンパーは地震そのものをなくしてくれるわけではありません。
建物の形状や装置の配置、地震動によって効果も変わります。
だから、
「このダンパーが付いているから絶対安心」
ではなく、
「この家の構造計画の中で、どんな役割を持たせているのか」
を説明できることが大事だと思っています。
地震の後、家族はどこで寝るのでしょうか?
ここからは、私が特にお伝えしたいことです。
大きな地震が起きました。
家は倒れませんでした。
でも、
電気が止まった。
水が出ない。
トイレが使えない。
冷蔵庫が止まった。
真夏でエアコンも動かない。
そんな状況になったら、どうでしょうか。
建物は残っていても、暮らしは大変です。
私は以前から、家を単なる建物として考えたくないと思っています。
家は家族の暮らしを支える小さなインフラでもあるんです。
だから明工建設では、断熱や気密、換気、太陽光、蓄電池などを、一つずつ独立した商品としてではなく、暮らし全体の仕組みとして考えています。
例えば高断熱住宅なら、停電時にも外気温の影響を受ける速度を緩やかにすることが期待できます。
太陽光と蓄電池があれば、設備の仕様や残量、天候などの条件に応じて、停電時に必要な電気を使える可能性が高まります。
ただし、水道や下水道が止まった場合は、別の備えが必要です。
そして何より、地震の後に建物の安全性が確認できなければ、無理に家にとどまってはいけません。
ここは誤解しないでほしいところです。
家が倒れないこと。地震の後も安全に使えること。そして、暮らしを続けるための備えがあること。
この三つは、似ているようで別の話なんです。
「深呼吸する正圧の家」と耐震は、どうつながるのか
「仁藤さん、地震の話なのに、どうして空気や断熱まで出てくるんですか?」
そう思われるかもしれません。
私は、家づくりを一つの性能だけで考えたくないんです。
耐震等級3。
断熱等級6。
気密性能。
計画換気。
制震装置。
太陽光。
蓄電池。
それぞれに役割があります。
耐震性能は構造安全性のため。
断熱・気密は温熱環境とエネルギー効率のため。
換気は室内空気を計画的に入れ替えるため。
蓄電池は停電時の電源確保や自家消費のため。
正圧換気だけで地震に強くなるわけではありません。
でも、これらが一緒に働くことで、普段の快適性から災害時の備えまで考えられる。
私はそこに価値があると思っています。
家は、構造だけでも、設備だけでも完成しません。
家族がそこで何十年も暮らすことまで考えて、初めて家づくりになる。
そんな気がするんです。
「建てた時の性能」より、私が気になること
家が完成したときは、どの会社もきれいです。
新しい外壁。
新しい屋根。
新しいキッチン。
新しい設備。
でも、10年後はどうでしょう。
20年後は?
30年後は?
雨漏りが起きていないか。
シロアリ被害はないか。
配管は大丈夫か。
基礎に問題はないか。
地震を経験した後、必要な点検を受けているか。
増改築で耐力壁を不用意に取り除いていないか。
家の強さは、完成時の設計だけでなく、その後の状態にも左右されます。
2016年の熊本地震を受け、国土交通省は1981年以降、2000年以前に建てられた木造住宅についても耐震性能の検証を促す資料を公表しています。
新築時には当時の基準に適合していても、年月とともに知見や基準が更新される。
だから私は、住宅履歴を残すことが大切だと思っています。
設計図。
構造計算書。
施工写真。
地盤調査。
検査記録。
修繕履歴。
設備の交換記録。
人間でいえば、家のカルテですね。
家のことを次の世代や別の技術者にも伝えられるようにしておく。
これも、長く住める家の条件ではないでしょうか。
家づくりの前に、ぜひ住宅会社へ聞いてほしいこと
今度モデルハウスへ行ったら、営業担当者に少し聞いてみてください。
仁藤流・耐震確認チェックリスト
全7項目耐震等級3は、どの計算方法で確認していますか?
第三者の評価書は取得できますか?
柱・梁・接合金物・耐力壁・基礎の施工は、誰がどう検査していますか?
地盤調査結果と、必要な地盤対策を説明してもらえますか?
制震装置を採用する場合、どんな効果を想定していますか?
大地震の後、どのような点検を受けられますか?
設計図や施工写真、点検・修繕履歴は将来も確認できますか?停電・断水時に、どの設備がどこまで使える設計ですか?
全部に即答できる営業担当者ばかりではないと思います。
それは仕方ありません。
営業担当者が構造設計者ではないこともありますから。
ただ、
「確認して、資料と一緒にご説明します」
と言ってくれる会社なら、私はむしろ誠実だと思います。
大事なのは、何でも即答することではありません。
分からないことを分からないと言い、きちんと調べて説明してくれるかどうか。
家づくりって、結局は人と人とのお付き合いですから。
私が一番怖いのは、地震の後に「もう住めません」と言われること
少し想像してみてください。
30年掛けて返すつもりだった住宅ローン。
子どもたちの成長を見守るはずだった家。
家族で何度も食卓を囲んだリビング。
それが、大きな地震の後に使えなくなってしまったら。
命が助かったことは、何より大切です。
でも、その後の暮らしを立て直すのも簡単ではありません。
だから私は、建築屋として、
「大きな地震でも命を守る」
ということだけで満足したくないんです。
できることなら、
大きな地震の後も、適切な点検と必要な修繕を経て、また家族が安心して暮らせる家にしたい。
もちろん、どんな地震でも住み続けられると約束はできません。
それでも、その可能性を高めるために設計や施工でできることはある。
そこを諦めたくないんです。
最後に。私は「一流」という言葉を、少し違う意味で考えています
今回の記事を読んで、改めて考えました。
一流ハウスメーカー。
一流の住宅。
一流の建築屋。
そもそも、一流って何でしょうね。
会社が大きいこと?
テレビCMをたくさん流していること?
展示場が豪華なこと?
売上が多いこと?
それも一つの評価かもしれません。
でも私は、少し違います。
自分たちが建てた家に、お客様が住み始めてからも責任を持とうとすること。
そのために勉強する。
新しい技術を知る。
過去の地震被害から学ぶ。
設計を見直す。
現場を確認する。
そして、何かあったときに逃げずに向き合う。
もちろん、私たちにもできることとできないことがあります。
だからこそ、できることを増やしていきたい。
何十年も建築の仕事をしていても、まだまだ学ぶことがあります。
今回の熊本地震の記事も、その一つでした。
掛川市、菊川市、御前崎市、牧之原市、袋井市、島田市、藤枝市、磐田市で家づくりを考えている皆さん。
耐震等級3と説明されたけれど、何を確認すればいいのか分からない。
大手ハウスメーカーと地元工務店、どちらがいいのか迷っている。
中古住宅を買って耐震改修するか、建て替えるか悩んでいる。
そんな相談でも構いません。
他社さんの図面や仕様書をお持ちいただいても大丈夫です。
私たちの考え方と違うところがあれば、その理由もお話しします。
最後に選ぶのは、お客様です。
私は、家を売るためだけにお話ししたいわけではありません。
家族が30年後も「あの時、ちゃんと考えて建ててよかったね」と言える家づくりをしたい。
地震のニュースを見ながら、改めてそんなことを考えていました。
ご縁を大切に唯一無二の家造り。
住んでからがお付き合いの始まり。
おかげさまでありがとうございます。
参考資料
- ダイヤモンド不動産研究所(2026年10月6日)「一流ハウスメーカーでも震度7に耐えられない」は本当か?
- 建築研究所:平成28年(2016年)熊本地震関係特設ページ
- 建築研究所:令和8年(2026年)熊本地震関係特設ページ
- 国土交通省:新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法
※2026年の熊本地震に関する報道と、2016年熊本地震の耐震等級別被害調査は区別して記載しています。個別メーカーの住宅の耐震性能を一律に評価するものではありません。
お読みいただき、ありがとうございます。
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