
みなさん、おかげさまです。
明工建設、一級建築士の仁藤衛です。
前回は、織田信長を「戦の天才」ではなく、お金と物流を動かしたサプライチェーンの天才という視点から考えてみました。
今回は、さらに時代をさかのぼります。
テーマは、
「元寇」です。
蒙古襲来と聞けば、
「元軍が日本へ攻めてきた」
「日本の武士が戦った」
「最後は神風が吹いて日本が助かった」
学校では、だいたいそんな流れで習った記憶があると思います。
もちろん暴風雨が元軍の艦隊へ大きな被害を与えたことは重要です。
でも私は、歴史を見る時にいつも思うんです。
「なぜ、そもそも彼らは海を渡ってきたのだろう?」
ここを考えないと、本当の元寇は見えてこないのではないでしょうか。
今回いただいた資料では、その答えを、
「資源・通貨・物流・安全保障」
という経済の側から読み解いています。
ただし最初に一つお断りしておきます。
「日本から南宋への硫黄供給遮断が元寇の主要目的だった」「元寇を経済封鎖作戦と位置づける」といった部分は、非常に刺激的な歴史解釈ですが、一般的な歴史学で確定した単一の説明として扱うべきものではありません。
今日はあくまで、
「経済とロジスティクスというレンズを通すと、元寇はどう見えるのか」
という仁藤流で考えてみたいと思います。
■元寇を理解する前に「日本だけ」を見てはいけない
まず、これが一番大切です。
13世紀の日本列島だけ見ていても、元寇は理解できません。
当時、ユーラシア大陸では、とんでもないことが起きていました。
モンゴル勢力が大陸を横断する巨大な帝国圏を形成していた。
中国では南宋と元が対立している。
陸上では人や物が動く。
海でも貿易が行われる。
そして日本も、その巨大な経済ネットワークから孤立していたわけではありません。
中国からは、
銅銭。
陶磁器。
織物。
書籍。
薬品。
香料。
などが入ってくる。
日本からは、
硫黄。
木材。
金。
刀剣。
漆器。
などが海を渡っていく。
つまり鎌倉時代の日本は、
すでに「世界経済」の一部だった
と見ることができます。
■特に面白いのが「硫黄」という資源
今回の資料で、私はここに一番興味を持ちました。
硫黄です。
硫黄なんて聞いても、
「温泉の匂い?」
くらいに思う方もいるでしょう。
でも当時の軍事を考えると意味が違います。
火薬には硫黄が使われます。
つまり硫黄は、軍事利用につながる戦略物資でもあったわけです。
現代で例えるなら、
石油。
天然ガス。
半導体。
レアアース。
そういったものを想像すると分かりやすいかもしれません。
モノそのものは地味でも、
それが止まった瞬間、国家の力まで変わってしまう。
歴史では、こういう資源がとても重要なんです。
■戦争は「武器」から始まるのではない
例えば、火薬兵器が強いとします。
では火薬兵器さえ持っていれば戦争に勝てるでしょうか。
違いますよね。
火薬をつくる原料が必要。
武器を製造する職人が必要。
食料が必要。
船が必要。
港が必要。
兵士が必要。
それらを運ぶ道路も必要。
そして全部を買うお金が必要。
つまり、
戦争とは、戦場で始まる前に経済で始まっている。
私はそう思うんです。
これは前回の信長の話ともつながります。
鉄砲がすごかったのではない。
鉄砲を継続して使える物流がすごかった。
元寇も同じ視点で見ると、急に違う景色が見えてきます。
■クビライは「日本の黄金」だけを欲しがったのか
日本といえば「黄金の国ジパング」。
だから元は日本の金が欲しくて攻めてきた。
そんなイメージを持っている方もいるでしょう。
でも、それだけで説明するのは少し単純すぎます。
クビライが率いた元は、当時、南宋との対立という巨大な問題を抱えていました。
そして日本は南宋との交易関係を持っていました。
ここで今回の資料は、
日本から南宋へ供給される硫黄などの戦略物資
に注目します。
もし敵対する勢力へ重要資源が流れ続けているなら、その供給網へ政治的圧力をかける。
これは現代でも見られる安全保障の発想です。
ただし、
「だから硫黄を止めるためだけに日本を攻めた」
とまで断定すると話が飛びます。
元の対日外交や侵攻には、朝貢・服属要求、東アジアにおける秩序形成、南宋との関係、軍事・外交上の事情など複数の要因を考える必要があります。
でも、
「日本との外交を、南宋を含めた東アジア全体の戦略の中で見る」
という視点は、とても面白いと思います。
■元寇を「世界最強の物流システムが海を渡ってきた」と考えてみる
モンゴル帝国というと、
馬に乗った兵士が弓を射る。
そんなイメージがあります。
確かに騎馬軍事力は圧倒的でした。
しかし、それだけでユーラシア規模の帝国を維持することはできません。
人を動かす。
馬を動かす。
情報を動かす。
物資を動かす。
商人を動かす。
そしてお金を動かす。
そのためには、
ネットワーク
が必要です。
モンゴル帝国の本当の強さは、軍事力とともに、広域の交通・通信・交易を統合したことにもあった。
だから私は、
元寇を単なる、
「外国の兵隊が船で攻めてきた事件」
ではなく、
巨大なユーラシア・ネットワークが日本列島の目前まで迫ってきた事件
と考えると、とても分かりやすいと思うんです。
■武力だけでは帝国は維持できない
ここも大事です。
征服するだけなら軍隊でできます。
でも、
征服した地域から税を集め、交易させ、物を運び続ける
となれば軍隊だけではできません。
商人が必要です。
金融が必要です。
交通網が必要です。
治安が必要です。
行政も必要です。
クビライの時代には紙幣、塩をめぐる専売・財政制度、運河、駅伝・交通網、海上交易など、巨大国家を維持する経済システムが発達していきます。
ここから見えてくるのは、
本当に強い国は「戦える国」ではなく、「巨大なシステムを維持できる国」
だということです。
■これ、家づくりとまったく同じなんです
また家の話か、と言われそうですが(笑)。
私は歴史を読んでいると、どうしても家づくりにつながってしまいます。
例えば、
「この家は太陽光10kWです」
すごそうですよね。
でも、それだけでは分からない。
昼間につくった電気をどう使うのか。
余ったらどうするのか。
夜はどうするのか。
停電したらどうするのか。
蓄電池は?
HEMSは?
EVは?
V2Hは?
そもそも家自体の消費エネルギーは小さいのか?
ここまでつながって初めて、
エネルギーシステム
になります。
モンゴル帝国も同じです。
騎馬兵が強いだけでは世界帝国にはならない。
道路。
馬。
駅。
商人。
税。
貨幣。
食料。
船。
情報。
全部つながった時に、とんでもなく強くなる。
■「自給できる」ということは安全保障でもある
今回の歴史から、現代の私たちが学べる大きなテーマ。
私は、
「依存することのリスク」
だと思います。
現代の日本は、生活に必要な多くのエネルギーや資源を海外からの輸入に頼っています。
普段は問題ありません。
タンカーが来る。
発電所が動く。
送電線を通って電気が来る。
私たちはスイッチを押す。
当たり前に電気がつく。
でも、その間には巨大なサプライチェーンがあります。
資源採掘。
国際市場。
船舶。
海上交通。
港。
発電所。
送電網。
変電所。
電柱。
そして家庭。
コンセントの向こう側には、世界がつながっている。
これを忘れてはいけないと思うんです。
■だから私はスマートオフグリッドを考える
明工建設がスマートオフグリッドハウスに取り組んでいる理由も、ここにつながります。
完全に電力網から切り離して仙人のように暮らそう、という話ではありません。
普段は社会インフラを利用する。
でも、
社会インフラに100%依存しなくても暮らせる力を、少しずつ自分の家へ持つ。
屋根で電気をつくる。
昼間に自家消費する。
余れば蓄電池へ貯める。
EVへ充電する。
必要ならV2Hで家へ戻す。
そして、その前提として、
断熱。
気密。
日射制御。
換気。
高効率設備。
によって、そもそも必要なエネルギーを小さくしておく。
すると、
小さな発電量でも家族の生活を支えやすくなる。
これが大切なんです。
■「大量に持つ」より「少なくても生きられる」
戦略物資を考える時、
普通は、
「たくさん確保しよう」
となります。
もちろん備蓄は重要です。
でも住宅では、もう一つ方法があります。
そもそも必要量を減らしてしまう。
例えば真夏。
大型エアコンを何台もフル稼働しなければ暮らせない家と、
建物性能を高め、小さなエアコンを中心に快適を維持できる家。
停電時に有利なのはどちらでしょう。
後者ですよね。
電気料金が上がった時も同じです。
つまり高断熱・高気密は、
単なる省エネ性能ではない。
見方を変えれば、
家庭のエネルギー安全保障
なんです。
■800年前の「硫黄」と、現代の「電気」
もし硫黄が火薬兵器を支える重要資源だったとするなら、
現代社会を動かしている戦略資源の一つは何でしょう。
私は、
電気
だと思っています。
冷蔵庫。
エアコン。
照明。
スマートフォン。
インターネット。
給湯。
IH。
医療機器。
EV。
現代の家は、電気が止まった瞬間に多くの機能を失います。
つまり電気は、
「便利なもの」
ではなく、
現代生活の生命線
になっている。
だからこそ、
「電気は電力会社から買えばいい」
だけで家を設計していいのだろうか。
私はそこを疑っています。
■物流を止められたらどうするのか
歴史を見れば、
戦争。
感染症。
自然災害。
政治対立。
資源価格高騰。
いろいろな理由で物流は止まっています。
もちろん現代日本で、明日突然すべての物流が止まるという話ではありません。
必要以上に不安を煽るつもりもありません。
でも住宅は、
30年、40年、50年使うものです。
その間、何も起きないことを前提に設計する方が、私は不自然だと思っています。
だから備える。
地震が来ても壊れにくくする。
停電しても電気を使えるようにする。
猛暑でも少ない電力で暮らせるようにする。
断水にも可能な範囲で備える。
これが住宅会社のできる「安全保障」だと思っています。
■「グローバル化が悪い」という話ではない
ここは誤解してほしくありません。
交易が悪いわけではありません。
むしろ交易によって、人類は豊かになってきました。
日本だって、宋銭や陶磁器、書物、技術など、海外との交流から多くの恩恵を受けてきました。
現代も同じです。
問題は、
つながることではなく、「一つの供給源に依存しすぎること」
だと思います。
これは住宅でも同じ。
電力会社とつながる。
太陽光も使う。
蓄電池も使う。
EVも使う。
必要に応じて系統電力も使う。
つまり、
依存先を一つにしない。
これがレジリエンスです。
■「一帯一路」と元寇を一直線には結ばない
今回の資料では、クビライ時代の陸海交通ネットワークと、現代中国の「一帯一路」を重ねて考えています。
確かに、
陸路。
海路。
港。
資源。
物流。
これらを押さえることが国家戦略上重要なのは、古代でも現代でも変わりません。
ただし、
「元の政策がそのまま800年後の一帯一路へ続いている」
と断定するのは歴史を単純化しすぎます。
国家体制も国際法も経済も技術もまったく違います。
むしろ私が注目したいのは、
時代が変わっても「物流路と重要資源が国家の力を左右する」という構造そのものは繰り返し現れる
ということです。
ここを学ぶ方が、歴史はずっと面白いと思います。
■仁藤流で考える「本当の防災住宅」
家を丈夫につくる。
もちろん大切です。
耐震等級3。
制振装置。
これも必要です。
でも私は最近、
「地震で壊れない家」だけで、本当に防災住宅と言えるのだろうか?
と考えています。
地震の翌日。
電気が来ない。
真夏35℃。
冷蔵庫が止まる。
スマートフォンの充電も減っていく。
ガソリンスタンドには行列。
物流も乱れる。
そんな時、
耐震性能によって家が残っただけでは、生活は守れません。
だから、
「壊れない性能」の次に「暮らし続けられる性能」が必要になる。
太陽光。
蓄電池。
V2H。
高断熱。
高気密。
正圧換気。
省エネ設備。
それぞれ単独で見るのではなく、
災害後にも家族の日常を維持する一つのシステム
として考える。
これが私たち明工建設の家づくりです。
■元寇から800年。家族を守る「兵站」を家の中につくる
戦争の言葉なので少し物騒ですが、
「兵站」という言葉があります。
戦う人へ、
食料。
水。
武器。
薬。
情報。
必要なものを送り続ける仕組みです。
実は家庭にも、兵站があります。
電気。
水。
食料。
空気。
温度。
通信。
これらが途切れた時、生活は急に苦しくなる。
だから私は、
これからの住宅には「家庭のロジスティクス」という考え方が必要
だと思っています。
電気をつくる。
貯める。
少ない電力で暮らす。
水を備える。
空気を管理する。
室温を維持する。
情報通信を確保する。
家族が頑張って耐えるのではなく、
家そのものが、家族の暮らしを支える。
■歴史は未来の住宅を考えるためにある
元寇を、
「蒙古が来ました」
「武士が戦いました」
「神風が吹きました」
で終わらせてしまうのは、もったいない。
その背景へ目を向ければ、
資源がある。
交易がある。
貨幣がある。
商人がいる。
物流がある。
外交がある。
軍事がある。
全部つながっています。
そして800年後の私たちも、
資源。
エネルギー。
物流。
国際情勢。
災害。
電力網。
という巨大なネットワークの中で暮らしています。
だから歴史から学ぶべきなのは、
「外国は怖い」
という話ではありません。
私はむしろ、
「何か一つに依存しすぎた社会は、変化に弱い」
ということだと思っています。
それは国も同じ。
企業も同じ。
そして家も同じです。
■仁藤流の結論。「自立」とは、孤立することではない
これから家を建てる方に、一つ覚えておいていただきたい言葉があります。
自立とは、孤立ではありません。
電力網とつながっていていい。
地域ともつながる。
社会ともつながる。
世界ともつながる。
でも、
何か一つが止まった瞬間、すべてが止まる家にはしない。
これが私の考える自立です。
明工建設が目指しているスマートオフグリッドハウスも同じです。
電力会社から切り離された家ではない。
社会とつながりながら、
太陽光で電気をつくり、
蓄電池に貯め、
少ないエネルギーで快適に暮らし、
必要ならEVの電気も活用する。
「つながっている。でも、依存しすぎない。」
私は、このバランスこそ、これからの時代に家族を守る住宅の一つの答えだと考えています。
800年前、海の向こうから巨大なユーラシアのネットワークが日本へ押し寄せました。
そして現代の私たちは、もっと巨大な世界経済のネットワークの中で生きています。
だからこそ今、
家づくりにも、
「資源」「物流」「エネルギー」「自立」という視点
が必要なのではないでしょうか。
家とは、雨風をしのぐ箱ではありません。
私はこれからの家を、
家族の暮らしを守る、小さなインフラ
にしていきたいと思っています。
歴史を知ると、未来の見え方が変わる。
未来の見え方が変われば、家づくりも変わる。
ご縁を大切に唯一無二の家造り。
住んでからがお付き合いの始まり。
おかげさまでありがとうございます。
お読みいただき、ありがとうございます。
もし今回の内容に少しでも共感いただけたなら、
こちらもきっとお役に立てると思います。
明工建設が選ばれる理由とは?
第1位 住む人の幸せを考え抜いた高性能住宅

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