30人に1人が住宅ローン破綻?──店長が語る実態と住宅会社の責任
第1章|「30人に1人」は何を意味するのか — 実態の整理
まず「30人に1人」という表現の意味を整理します。公的データ(住宅金融支援機構など)では、住宅ローンのうち「返済が困難な債権」を広く含めた指標が約3%前後と報告されています。これは概ね「33人に1人」に相当し、わかりやすく表現すると「およそ30人に1人」が返済に困る可能性があるということになります。
重要なのは、この指標は「即・競売や自己破産」と同義ではない点です。延滞、代位弁済、任意売却、返済条件の変更などを含めた広い概念で集計されています。つまり「返済に行き詰まって何らかの救済や措置を受けた人たち」を含めた数値です。
また長期的には2010年代に高かった割合が改善した時期もありますが、経済環境の変化(物価高・金利上昇・雇用不安)により再びリスクが高まる可能性があり、統計数値だけで安心はできません。 また、この統計には不確実性もあり、銀行データの精度や審査基準の違いから実態とはズレる可能性があります。
第2章|破綻する人・しない人の違い
では、どんな人が破綻しやすく、どんな人が破綻しにくいのでしょうか。統計と実務の両面を踏まえると、主に次の要素が影響します。
| 項目 | 破綻しやすい傾向 | 破綻しにくい傾向 |
|---|---|---|
| 借入条件 | 頭金が少ない・借入比率(LTV)が高い・ボーナス頼み | 自己資金を入れ、適切な返済負担率で借りている |
| 収入の安定性 | 非正規・短期雇用・収入変動が大きい | 安定的な給与収入・複数収入源や貯蓄がある |
| ライフプランの想定 | 将来の変化(離婚・失業・怪我)を想定していない | 将来の変動を織り込んだ余裕のある資金計画 |
| 住宅の品質 | 割安物件で初期費用を抑えすぎ、その後の維持費が高い | 適切な品質で維持費や光熱費を見越した設計 |
若年層や退職間近の世代、収入が不安定な世帯は特にリスクが高いことが報告されています。また、頭金ゼロや過度な期待(過剰な将来収入)でローンを組んだケースは一挙に破綻リスクを高めます。
第3章|価格・ローン・ライフプラン提案の重要性
住宅の価格やローン設計、そしてライフプランの提案品質は、破綻を避けるうえで決定的です。ここで大切なポイントをまとめます。
| 視点 | やるべきこと(お客様向け) |
|---|---|
| 価格設計 | 本体価格だけでなく諸費用・メンテコストを含めた総費用で判断 |
| ローンの組み方 | 返済負担率(年収に占める返済割合)を適正に、金利上昇シナリオでの試算を必ず確認 |
| 返済の安全性 | 頭金確保、余裕資金、金利上昇時のキャッシュフロー確認 |
| ライフプラン | 教育費・老後資金・住宅以外の負債を含めた総合的な設計 |
重要なのは「その場しのぎの契約」ではなく、将来の変化まで見越した設計です。住宅は数十年単位の買い物。短期的に月額を抑えるために性能や耐久性を削ると、結果的に生活コストが上がり返済負担を圧迫します。
第4章|なぜ当社には破綻するお客様が少ないのか?
ここで店長が強調した「我が社では破綻したお客様の話を聞かない」という点について、実務的な理由を整理します。要は「売り方」だけでなく「提案内容と支援体制」が違うのです。
| 明工建設の取り組み | 期待される効果 |
|---|---|
| 総費用提示と見える化(建物+諸費用+維持費) | お客様が将来の負担を正しく把握できる |
| 保守・維持コストを見越した仕様提案 | 長期で見たコスト負担が軽くなる |
| 返済負担率を基にした無理のないローンプラン | 想定外のリスクに強い返済設計 |
| ライフプラン面談(教育費・老後含む) | 住宅以外の支出を含めた無理のない計画 |
| アフターと相談窓口の継続 | 困った時の早期対応で破綻回避に寄与 |
当社では単に「家を売る」のではなく、「暮らしが続けられる家計設計」を一緒に作ることを重視しています。これが破綻率が低い最大の要因であり、店長が誇りにしている部分です。
第5章|住宅会社に求められる本来の責任
最後に、住宅会社としての責任についてまとめます。数字だけを追いかけて契約を急ぐ姿勢は、お客様の将来を危うくします。住宅会社が果たすべきは次の三点です。
| 責任 | 具体的な行動 |
|---|---|
| 誠実な情報開示 | 総費用・維持費・ローン総額を明確化 |
| 無理のない金融設計の提案 | 無理のない返済負担率、金利上昇時の試算を提示 |
| 長期の伴走支援 | アフター対応・支援窓口・ライフプランの見直し支援 |
| 自社よりも顧客の利益優先 | 自社の利益に走るのではなく、真に価値あるものを提供する |
店長の言葉を借りれば、「我々の仕事は家を売ることではなく、未来の安心を売ること」です。30人に1人という数字は決して他人事ではありません。住宅会社にも、そして購入を検討する皆さまにも、冷静で誠実な判断が求められる時代です。
「30人に1人」の背景には、ローン条件の甘さ・収入の不安定化・不十分なライフプラン提案など複合的な要因があります。数値を恐れるのではなく、事実を理解し、〈適切な価格設計+堅実なローン設計+暮らしを支える提案〉を行う会社を選ぶことが、後悔しない家づくりへの近道です。

